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爽凉(そうりょう)
Cool and Refreshing
1956年
絹本彩色・額 133.0×107.0cm
若い婦人が扇子を手に、やや横坐りに坐っている。その向うに虫寵が置いてある。ただそれだけの情景を描いたものであるが、しかしこの絵には、いわゆる美人画の通俗的な美しさではなく、女性の美を徹底的に追求した果てに現れる一種のすごみのようなものが感じられる。この画家は幼時期両手に大火傷を負い、五指の自由を失ったため、絵筆を両掌の間に挟んで描いた。その不自由さを克服し、渋滞のない強靱な描線や、髪、絽の着物の精緻な描写には驚くべき技巧の冴えを示している。
中村貞以は院展に属する画家だが、もともと院展には理想主義的傾向があり、小林古径や安田靫彦の例をあげるまでもなく、描写に端正な美しさ、澄んだ感じが求められた。彼の美人画にも、その伝統が受け継がれていることがわかる。第41回院展に出品された。