19
草炎
Flaming Grass
1930年
絹本彩色・屏風(6曲1双)
各176.8×369.5cm
第2回青龍展出品作。翌年には第2回朝日賞を受賞した。第1回展に発表した《鳴門》がダイナミックな波の表現で人目を驚かしたのに対して、一転して紺地に金泥で夏草だけを描いて華やかな中にも力強い画面を作り出している。古画で草を描くといえば専(もっぱ)ら秋草図であったが、一転して夏草を主題とした点で意表をついている。また紺地に金泥といえば装飾教にしばしば用いられた手法であり、この作品の表現が彼の創意になるところは大きい。ここでは黒とみまがうほどの深い紺地に赤金や青金などの色合いの異なる金泥を用い、のびやかな線で様々な種類の草を描きわけている。この作品の発表当時の雑誌に奇せて龍子は、「存外涼しかったこの夏(中略)/寒暖計の赤棒が景気よく/ぐっと百度を指したなら/草炎の畫意もまた自ら/焔々たり得たらうものを/だが兎も角も―紺地金泥/夏の象徴―夏の子の意図」といった言葉を記している(『アトリヱ』第7巻第10号)。昼間の熱気をはらんで燃えるように闇に沈む草を表しているのか、あるいは紺の空間はより象徴的に灼熱の大気を表しているのか、この言葉からはわからないが、おそらくはその両方を意図していたのではないだろうか。会場芸術を標榜した龍子にふさわしい大作である。