慶長十四年(一六〇九)に竣工した瑞巌寺本堂は、すでに建造物として国宝に指定されているが、今回、内部各室の障壁画をその絵画史上の重要性に鑑み、美術工芸品の重要文化財として別途指定を図った。その画題は室中の間が松に孔雀図、文王の間には文王呂尚図、上段・上々段間には竹梅図および花木図、仏間には桜図、鷹の間には鷙鳥【しちよう】図、松の間には松桜図、菊の間には菊図が、いずれも金地濃彩によって描かれている。このうち、鷹の間、松の間、菊の間以外の各室は、金雲に様々な形の盛り上げ文様があり、金地のもつ豪奢な雰囲気を一層ひきたたせている。製作年代および筆者については、享保十五年(一七三〇)の年記をもつ上堂牌【じようどうはい】裏面の墨書にある。元和六年(一六二〇)から同八年にかけて、文王の間が長谷川等胤【とういん】、室中の間が狩野左京、礼間、桜間、菊間が左京弟子九郎太の筆になった、という寺伝が、一つの拠り所となろう。なお、吉備幸益【きびこうえき】筆であることが明らかな仙人墨絵間の障壁画二十二面および、杉戸絵二十面は附指定とした。