本巻は、平安時代後期書写になる色紙阿弥陀経の遺巻である。
体裁は巻子装。原表紙および巻頭一二行分を欠くが、「尓時佛告長老舎利弗従是西方過十万億」以下尾題「佛説阿弥陀経」までを存する。
料紙には、茶・紫・白茶・藍・濃萌葱地の五色の色紙が用いられ、金銀の砂子や切箔を散らしている。さらに第三・八紙目には飛雲の装飾が見られる。こうした美麗な九枚の色紙を色違いに継ぎ合わせ、金泥の界線を施し、一紙一三行、一行一七字宛に典麗な筆致で書写されている。また紙背にも金箔砂子散【ちらし】を施している。奥書はないが、料紙や書風などよりみて、一一世紀前半の書写と考えられる。
寺伝の『元禄八年記録』『田生山旧記』によれば、明応五年(一四九六)、松平親忠が岡崎城に入城後、満性寺参詣の折、本巻を護符として所望したため、巻頭一二行を献上したとする伝承を記している。
平安時代の色紙経の既指定品としては、国宝『法華経巻第六』(和歌山金剛峯寺蔵)以下七件を数え、そのほとんどが法華経の遺品であり、ほかには『千手千眼陀羅尼経』(和歌山道成寺蔵)、『仁王般若経』(福岡英彦山神宮蔵)が知られている。
本巻は類例稀な色紙阿弥陀経の遺巻であるが、その体裁から、もとは平安時代後期に盛んに書写された浄土三部経の一つと考えられる。