建久3年3月13日に没した後白河法皇(1127~92)を追善供養するために作られた美麗な写経で、現存する4巻うちの1巻である。これらの料紙には墨一色で何らかの物語絵が描かれている。この絵は彩色を施す前の段階の下絵で、吹抜屋台の内外に貴族の男女や僧侶などの姿を確認できる。これら4巻は制作経緯や時期、作画過程を把握できることから、物語絵巻ひいてはやまと絵研究の基礎資料として特に高く評価され、奥書があって首尾完存する2巻(京都国立博物館、大東急記念文庫)はすでに個別に国宝指定されている。本巻には奥書がなく、途中6紙を欠く。それでも全体の約82%が良好な状態で制作当初の姿を維持していることは貴重である。物語の場面数も現状において4巻中最多であることなど、質・量ともに既指定の国宝2巻に匹敵する1巻として、特に高く評価することができる。