黒漆四方殿舎利厨子 こくしつしほうでんしゃりずし

工芸品 / 室町

  • 奈良県
  • 室町 / 1401-1500
  • 木製、二段框の基壇・軸部・上面の平らな方形屋蓋の三部からなる宮殿形厨子で、軸部内室上部に鉄製錠(後補)を着した中蓋を填め、さらに取り外し可能な屋蓋を被せる構造をとる。総体黒漆塗りとし、要所に朱漆の界線を施す。
     軸部は四方各面とも、上部欄間を連子、下部を二間の格狭間とし、中央部に両開扉を設けている。四面の扉内側の軸部内壁は、春日鹿御正体、三面火焔宝珠、大般若経宝幢、五輪塔をかたどった金銅半肉彫金具を装着し、仏舎利や木彫仏を納めた板をそれぞれ填めている。両開扉内側は群青・白群・緑青・白緑・黄土・丹・朱・胡粉・金泥などで、地蔵十王像および司録司命像、真言八祖像および聖宝・勝覚・益信・童子像、十六善神像および常啼・宝涌・梵天・帝釈天像、法相七師・十大論師および覚師子・善珠・昌海を彩絵している。
     各面内壁の金銅金具は細緻かつ的確な金工技術を駆使し、舎利や題字を窓からのぞかせる仕様にも趣向が凝らされている。扉絵は総体に形式化が認められるものの、色彩も多彩で、かつ伝統的な技法に通じた手堅い画技が認められる。また春日鹿御正体の本地五仏檀像にも、精緻を極めた卓抜な彫技がうかがわれ、総体に端正な造りを示している。
  • 総高38.3 基壇高4.8 基壇幅29.5 軸部高31.7 軸部幅21.8
    屋蓋高1.8 屋蓋方30.4(㎝)
  • 1基
  • 奈良市登大路町50
  • 重文指定年月日:19980630
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 能満院
  • 国宝・重要文化財(美術品)

本件については、興福寺大乗院第二七代門主である尋尊【じんそん】(一四三〇-一五〇八)の記録『大乗院寺社雑事記』や、興福寺の什宝を記した同尋尊筆の『本尊目六』に「四方殿舎利殿」とみえ、とくに『大乗院寺社雑事記』中、各内壁の金銅金具の仕様や扉絵の主題、御正体円相の径などに関する詳細な記述が本作品と一致するところから、「四方殿舎利殿」が本作品に該当すると考えられている。同日記によれば、文明十年(一四七八)に五輪塔金具の記述を初出とし、明応元年(一四九二)に功成り遂げて開眼供養が行われている。舎利は唐招提寺、東寺、西大寺など、上代から中世の舎利信仰史上重要な役割を担った相伝舎利を含む三十一所相伝の舎利が収集され、本厨子に当てられた。また扉絵は南都絵所松南院座の大輔清賢、金銅金具類の細工は森宗左衛門春清、春日鹿御正体の本地五仏は仏造僧正久蔵主が手がけたことが判明する。
 本件は優れた作行を示すとともに、史料からおよその造立年代や造立の経緯、銅細工師や絵師、仏師が判明する希有な舎利厨子の遺例として貴重である。

黒漆四方殿舎利厨子

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