徳川家康によって二条城天守閣が築城される以前の京の景観を描いた洛中洛外図としては、町田家旧蔵本(重要文化財 昭和一五・五・三国立歴史民俗博物館保管)、上杉家旧蔵本(重要文化財 昭和二八・三・三 米沢市所有)が知られるが、本屏風は、それらにならぶ数少ない洛中洛外図の古本であり、比較的近年に見出されたものである。
主要な景観の配置や東西方向の街路の向きなど、基本的な構成、および人物の風俗は上杉本に共通するものの、簡略化が認められ人物の数も少ない。
下京隻には、画面やや上寄りに賀茂川が流れ、その向こうに向かって左手を北として、白川から清水寺、三十三間堂までの東山の景が、賀茂川の手前には向かって左端の内裏から東寺までの景が描かれる。上京隻は画面上方に、向かって右手を北として千本閻魔堂から松尾神社までの北山から西山の社寺が描かれ、下方には公方邸、細川邸などの武家の邸宅を中心に烏丸通り上り西、一条より北の景が描かれている。
画風は直信印や元信印をもつ扇面の洛中洛外に共通するところもあり、狩野派の一工房の制作になるものとみなされる。制作時代は室町時代末から桃山時代前期の間と考えられる。
洛中洛外図の遺品は多数にのぼるが、桃山時代前期を遡るものは三例しか知られておらず、洛中洛外図の展開を考えるうえで貴重な作品といえよう。