本図は明治三十五年(1902)三月、日本美術院・日本絵画協会連合の第十二回絵画共通会に出品され、銀牌第一席を受けた作品で、うつむいて歩む王昭君の背後に悲泣するふたりの侍女、やや間をおいて王昭君を見送る宮女たちの群像を描く。 明治三十年代、菱田春草(1874~1911)は、輪郭線をほとんど用いずに色調の変化のみで対象を表現する画法を試みた。この試みは、ただ光や空気を描く工夫であっただけではなく、既成の決まりきった描き方を排し、西洋絵画の画風を取り入れて新しい日本画を作ろうとする、きわめて前衛的な美術運動であった。本図は、春草のこの時期を代表する大作である。