紙本墨画唐獅子図〈曽我蕭白筆/(旧本堂壁貼付)〉

絵画 / 江戸

  • 曽我蕭白
  • 江戸
  • 2幅
  • 重文指定年月日:19910621
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 朝田寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 阿形【あぎよう】と吽形【うんぎよう】に表された「唐獅子図」は、もと木造地蔵菩薩立像一躯(明治三十七・八・二十九指定重要文化財)を安置する本堂内陣左右の壁貼付であった。朝田寺は天台宗の寺院であり、また、吽形の構成や描法が、彭城百川【さかきひやくせん】筆「天台岳中石橋図【てんだいがくちゆうしやつきようず】」(昭和四十九・六・八指定重要文化財、奈良県・陶原四郎氏蔵)に近いので、本図は天台山中の石橋を表したものと考えられる。唐獅子や岩は刷毛状の筆で屈折の多い太線を作り、すこぶる大まかに描写されるが、形象の意味が損なわれることはなく、鬣【たてがみ】・点苔・渓流などの動勢に富んだ筆法とあいまって、迫力ある画面を作り出している。獅子にはこの激しい描写にそぐわぬ滑稽な表情が与えられ、おかしみを加えている点も本図の特色である。杉戸は本堂に続く書院の廊下両端に二枚ずつはめられるもので、各二枚とも内側の図のみに款記があるが(印章は「鳳凰図【ほうおうず】」が印文不明印と如鬼【じよき】、「獏図【ばくず】」が宇鸞斎【うらんさい】・暉雄【てるお】・如鬼。すべて描印【かきいん】と思われる)、外側の図も図様や筆法から曽我蕭白【そがしようはく】(一七三〇-一七八一)筆と認められる。
 「唐獅子図」の、大画面に対象を拡大して描く構成や剽軽な獅子の顔は、三十四歳の款記がある「雲龍図」(ボストン美術館蔵)と共通するものがあり、荒々しい筆法は、三十四、五歳ころの作と推定できる「寒山拾得図【かんざんじつとくず】」(明治四十一・四・二十三指定重要文化財、京都府・興聖寺【こうしようじ】蔵)に比較的近い。また、杉戸絵の款記の書体は、三五歳の「群仙図」(京都府・個人蔵)に近い。一方、「雪山童子図【せつさんどうじず】」(継松寺【けいしようじ】蔵)、「旧永島家障壁画」(三重県立美術館と個人で分蔵)など松阪・斎宮に伝わった作品も、描法や款記の書体において「群仙図」と近似し、しかも印章の欠損状態は「群仙図」以前に遡らない特徴をもつことから、蕭白は三十五、六歳ころ――明和元、二年(一七六四、五)ころ――この地に遊歴したと思われ、本図もその滞在中の作と考えられる。なお、本堂内陣部分は安永七年(一七七八)に一部増築したと伝えられ、「唐獅子図」各図の片下隅の補紙補筆はその移動の際にほどこされたと考えられる。
 「唐獅子図」は蕭白画の豪壮な一面をよく示す大作であり、またこの画家が活躍した伊勢での画業を代表するにもふさわしい。杉戸絵も顔料の剥落は認められるものの、特異な構想や鋭利な造型に見るべきものがあり、附として保存するのが望ましい。

紙本墨画唐獅子図〈曽我蕭白筆/(旧本堂壁貼付)〉

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