全面を刺繍で表した作品。画面は上中下の三段に分けられ、上段は飛天や楽器、及び『法華経』と『大無量寿経』の偈、中段は釈迦如来と阿弥陀如来の立像、下段は迦陵頻伽がいる蓮池を表している。中段の釈迦・阿弥陀像は蓮華座に立ち、宝相華文を透彫した豪華な光背を負い、頭上には天蓋を掲げている。仏前には華瓶一対と前机に載る獅子形香炉が見られる。このような表現には、実際の仏像を写したかのような印象を与える。刺繍糸は絹糸を主とし、仏像の頭髪や袈裟の一部、偈の文字などに人の髪を用いている。刺し縫い、留め縫い、こま縫い、まつい縫いなどの刺繍技法が用いられており、刺繍表現は精緻である。釈迦と阿弥陀の二尊は、この世から往生者を浄土に送る(発遣という)釈迦と、浄土で往生者を迎える(召喚という)阿弥陀を表したものである。中世の繍仏には浄土への憧憬を表した作品が数多く作成された。