101
小野忠重(1909−1990)
ONO,Tadashige
かたち
Form
昭和5年(1930)
東京国立近代美術館蔵(作者寄贈)
102
小野忠重(1909−1990)
ONO,Tadashige
かたち 鉄
Form- Iron
昭和8年(1933)
東京国立近代美術館蔵(作者寄贈)
103
小野忠重(1909−1990)
ONO,Tadashige
街
Town
昭和13年(1938)
東京国立近代美術館蔵(作者寄贈)
木版画家としてまた版画史研究家として知られる小野忠重は,プロレタリア運動に共鳴して新版画集団や造型版画協会を組織して版画の大衆化に尽力した。戦前は,民衆の生活に密着して,街や工場などの風景や労働者たちの境遇や運命を主題とした木版を制作したが,1950年頃には暗色に染めた紙に明るい色を刷るという独自の陰刻法の多色刷り木版を考案して重厚な画面と鋭い刻線を特徴とする個性的な作風を確立した。
≪かたち≫と≪かたち鉄≫は戦前の抽象版画であるが,前者は色面のマティエールの重ねあわせによって重厚なフォルムの構成となっている。後者は,新版画集団の機関紙『新版画』第9号(1933年6月)の巻末に掲載された「鉄―版画編輯試作」と題された,誌面上の共同制作の中の1点であり,白黒の木版で,鉄に託して文明と物質の強靭な意志と悲劇を幾何学的形態の組み合わせで表現している。≪街≫には工場街の一隅で争う二人だろうか,濃密な色彩のなかに太い輪郭線で,陰鬱なちまたの日常の一こまを大胆に刻している。