2隻の大きなオランダ船が寄港する港町を描いており、そのタイトルが「ライデン港とムイデン港」と解釈されることもありますが、詳細は不明です。「姑蘇石湖倣西湖勝景」と同じく2枚の紙を縦方向に繋いで大画面を作っています。描かれている風景表現も、所々に破綻をきたした空間表現と、素朴な景物・人物描写は、「唐人屋舖景」「出嶋阿蘭陀屋舖景」と類似していることから、1780年前後に豊島屋から出された版画と考えられます。
「姑蘇石湖倣西湖勝景」が蘇州版画の技法、つまり、濃淡ふたつの墨版に筆彩を加える手法を使っていますが、本図では西洋の銅版画を意識した表現、たとえばクロスハッチングのような描線の密集や、ルーレットによる打点を思わせる点描が随所に見られます。おそらく「姑蘇石湖倣西湖勝景」と同時に出版された版画で、モチーフと表現技法で中国とオランダを対照させる、長崎版画ならではの趣向に富んだ大作です。ただし本図に描かれた町並みは実際のオランダのそれではなく、蘇州版画に描かれた都市景観を参考にして構築された空想上の異国風景と思われます。
なお、画中下方に描かれているオランダ船の船尾に「SCHLAAK」と記されていますが、これは、オランダ東インド会社のために1736年に建造され、翌年の処女航海でオランダからバタビアに到着し、つづいて長崎にも航海したSchellach号との関連性が指摘されています。
【長崎ゆかりの近世絵画】