長崎貿易を通じて日本に渡ったイギリス製クリームウェアに、京都の陶工・尾形周平(1788~1839)による絵付が施されています。鉄絵で見込みに「寿老人」、縁に「蝙蝠」が描き込まれていますが、前者は長寿の象徴、後者は「福」の字と音が通じ、何れも吉祥のモチーフです。寿老人の衣服をみると、周平は凹凸を表わす際に、色の濃淡に加えて、銅版画に用いられるハッチングの技法(線を連ねて陰影を表わす技法)を採り入れています。底面には、筆記体を意識した洋文字のような赤絵銘「尾形周平/之寫」を確認でき、周平の異国趣味への関心が顕在化しています。収納箱の蓋表には「紅毛寿老人繪平鉢」の書付が残ります。
周平は、初代高橋道八(1740~1804)の三男で、同時代に活動した陶工・仁阿弥道八(1783~1855)の弟にあたります。尾形乾山の製陶法を学んだことを契機に私淑し、尾形性を名乗ったとされます。なお、姫路の東山焼、淡路の珉平焼の指導にもあたっており、兵庫の焼物にゆかりのある人物ともいえるでしょう。
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