山へ薪採りにいった曽参は、客のもてなしに困り彼の帰りを願って指を噛む母親に胸が痛み、帰宅を急ぎます。強い孝行の気持ちが離れている母の意志をも感じ取るという話です。真っ白の雲が湧き立つ空を背景に、色面による陰影表現を用いて幽玄な雰囲気が漂う河畔の風景を見せます。風景画として破綻なくまとめられた本図においては、独特のポーズを見せる母親の表現のほかに、一見原本の存在を感じさせるものはありません。石橋や左岸の建物などは、このシリーズに多用される『東西海陸紀行』のバタヴィアの風景を参考にしたのかもしれません。
【江戸の絵画】