本書は、藤原定家(一一六二~一二四一)自筆による『更級日記』の写本である。また、定家は不審箇所に朱を付し、勘物を加えたことを奥書に記した。本書の書写時期は『明月記』の記述から、寛喜二年(一二三〇)より後と見られる。
『更級日記』は難解な作品として知られていたが、これが錯簡によるものであることが近代に入って明らかとなり、この錯簡が写本、版本全てに踏襲されていたため、本書が『更級日記』唯一の祖本であることも明らかとなった。記録から、後西天皇(在位一六五四~一六六三)の御物本であったことが知られている。
本書は、『更級日記』本文を伝える最古写本として、又、唯一の祖本として、そして、定家による写本、校勘本として、我が国の文学史上に極めて価値が高い資料である。