12世紀に発願された「中尊寺経」、「神護寺経」、「荒川経」の三つは、どれも紺紙に金泥で書かれた装飾一切経である。その表紙や見返し、軸に共通した意匠が施されている。表紙には金銀泥で、大輪の宝相華を描き、外題を上部枠内に金泥でしたためる。見返しには霊鷲山で釈迦説法の図を描く。軸の両端には、金銅製魚子地撥型軸に、四弁花文が刻されたものが装着される。
本品はこの意匠を具えたものといえるが、いずれの願経であるかは定かではない。パターン化した宝相華、釈迦説法図の様式から、「神護寺経」や「荒川経」が書写された、12世紀半ば以降のものと推察される。