52
雷妃
Thunder Nymph
1945年(1952年刷)
木版・紙、彩色
51.0×36.6cm
左辺下に白文方印
53
天妃乾坤韻
Celestial Nymphs in Ether
1952年
木版・紙、彩色
59.8×44.3cm
左上に白文方印、左下に白文長方印
棟方志功は版画を「板画」と書く。それは板による画という以上に、銅版や石版とは違う、木版であればこそ可能な表現を棟方が自覚していたからである。その表現技法のひとつが陰刻すなわち黒い面に白い線を彫り出す技法で、これにより棟方は「女体のヌメヌメした世界」をストレートに生々しく表現するのではなく、「板画でなくては生まれきれないモノ」として表現する。この棟方独得の裸身の女たちが最初にみられるのは戦後の第一作《鐘渓頌》である。この六曲一双屏風に配された20図の女体のひとつが《雷妃》で、発表時は《雷紋の柵》と題されたようにバックに雷文が描かれ、板面をむだなく活かして形よく納めた黒い女体は乳、臍、腕、脚だけを白い線で表わしている。この陰刻による人体表現を《鐘渓頌》の制作を通して会得したことが転機となって、棟方の版画表現はより豊かになった。《天妃乾坤韻》の女体も陰刻によるものである。黒い身体の入れ墨のような白い線はよく見ると、身体の各部がそれと分るようにそれぞれの方向に彫り出され、それが効果的に働いて、のびやかな姿態はリズミカルに躍動しているかのようだ。この作品は《工楽頌両妃散華》ともよばれ、棟方の後援者工楽長三郎に捧げられたものである。美術愛好家を頌するにふさわしい、天空の花園に舞う二美神とも散華の中に舞う天女の図ともとれる作品である。なお色彩は紙の裏からにじみ出るようにつけられている。