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徳岡神泉(1896−1972)
TOKUOKA,Shinsen
狂女
Mad Woman
大正8年頃(c.1919)
東京国立近代美術館蔵(徳岡政子氏寄贈)
戦後は切り詰めた形態と色彩とで「存在の核心」に触れようとする独自の象徴的な画風を確立した神泉だが,その画家としての出発は,必ずしも順調なものではなかった。度重なる文展落選から,彼は自らの制作の根本的見直しをはかるため,京都を出て富士山麓の岩淵に移る。この作品は岩淵に移って間もない頃,近所にいた白痴の女乞食を描いたものである。従来の日本画の形式的な美をいったん御破算にして,美しさを超えたところに真実を見出すべく細密に描かれたこの≪狂女≫は,彼の転機となった重要な作品である。