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4. 遺産の保存状況 a) 現況 |
宅地、水田、畑などの土地の利用形態、および道や水路の配置などの集落の基本的な構造は、江戸時代末期から太平洋戦争前(19世紀前期〜20世紀中期)の状況を残している。ただし、相倉および菅沼集落の水田の一部は、かつては桑畑であったところを、相倉では1950年に、菅沼では1945年に転作したものである。荻町では、1890頃に集落の中央を貫いてつくられた道路が、集落に新しい要素をもたらしたが、この道路もすでに100年以上を経過していて、集落の歴史となっている。相倉にも、1958年に集落の中央を貫いて新しい道路がつくられている。 伝統的な建造物である茅葺きの合掌造り家屋や、ハサ小屋、板倉などの附属屋は、1世紀前の数に比べ、荻町では80%、相倉では45%、菅沼では70%程度となっているが、その配置や形態は古い形をよく保存していて、近代以前の集落の姿を十分に窺うことができる。白川郷に23、また五箇山に70あったこのような合掌造り集落も、現在ではこの荻町、相倉、菅沼の3集落だけとなっている。1970年の相倉、菅沼の史跡指定による、また1976年の荻町への伝統的建造物群保存地区制度導入による保存開始以降の3集落の変貌はほとんど見られず、制度は有効に機能している。 いずれの集落にも、伝統的な近隣の自治組織である「組」やその「組」を中心として行われる「ユイ」や「コーリャク」などの相互扶助の慣習も現在に伝承されていて、冠婚葬祭や茅葺き屋根の葺替え時などに有効に働いている。また、集落内の各家や資料館には古い生活用具や生産用具などの民俗文化財も豊富に保存されていて、昔の生活を知ることができる。このように、3集落では歴史的な集落景観や伝統的建造物群だけでなく、伝統的な社会制度や生活慣習、民俗資料がよく伝承されていて、総合的に保存されている歴史的な集落として貴重な存在である。 保存条例および保存計画に基づく保存地区の管理は、それぞれの村の教育委員会が行っている。建物や耕作地、樹木等の日常の維持管理は各所有者の責任となっているが、水路や道などの共同利用の施設の維持管理や地区内の火災予防の日常の活動などは、3地区とも近隣の伝統的な自治組織である「組」の共同作業または当番制で実施されている。 荻町集落では茅葺き屋根の葺替えは「組」を単位として行われる「ユイ」で行われているほか、「白川郷荻町集落の自然環境を守る会」(歴史的集落景観の保存を目的とする住民全員で構成される組織)において、保存に関して生じる諸種の問題を議論し解決を図っている。また、相倉と菅沼集落の「ユイ」による茅葺き作業は、平村と上平村の森林所有者による近代的な互助組織として結成された五箇山森林組合(相倉・菅沼集落の世帯主のほぼ全員が会員となっている)の活動として引き継がれているほか、それぞれの地区住民によって相倉史跡保存顕彰会および越中五箇山菅沼集落保存顕彰会が組織され、集落の合掌造り家屋と環境の保存、民俗資料の収集と展示などを目的とした活動が行われている。 |