b)資産の真実性  すでに述べたように「作業指針」24条は、世界遺産リストに登録される遺産について、6つの価値基準のうち1つ以上を満足すると同時に、真正性に関する審査にも適合しなければならないとしている。
 荻町、相倉、菅沼の3つの集落は、江戸時代以来の集落として存在し続けて、集落それぞれの地理的立地条件や境界に変更はない。荻町と相倉集落では保存の措置が取られる以前の19世紀末期と20世紀中期に集落に自動車道路が開設されているが、それ以外では旧道や水路、宅地や耕作地などの構成に大きな変化はなく、歴史的集落としての真正性は保たれている。
 合掌造り家屋をはじめとする集落を構成する歴史的な建造物は、保存計画にリストされ、その保存が義務づけられ、現状を変更するときには届け出て許可を受ける必要があるが、歴史的価値を損なう変更は認められない。また、その他の建築物の新築・改築等も原則禁止とされ、許可される場合も地区内の歴史的風致に調和した形態が求められる。これらの規制に対応して、伝統的建造物の保存のための修理や歴史的風致にそぐわない建築物の修景等の事業には、村の助成が用意されている。村はそうした補助金を支出することにより修理時における内容をチェックすることが可能となり、これらの真正性を保持することができる。
 維持修理の多くは、茅葺き屋根の全面または部分葺替えであるが、周辺の原野や森林で採取される伝統的な材料を使用し、住民の互助組織である「組」に伝承されてきた真正な技術により茸替えられ、真正な形態を保持している。また、一部の家屋においては軸部の傾斜や部材の腐朽等の原因により、解体や半解体修理が行われているが、これらの修理においては文化財の修復に経験の有る建築家が設計管理し、意匠・材料・技術の真正性の保持を保証している。
 なお、水田や畑などの集落の構成要素や周辺の環境についても保存計画やその他の法令により現状の変更が厳しく規制されていて、文化的景観と自然環境の真正性も保証されている。

[参考/作業指針第24条]
 世界遺産一覧表への記載を申請する「記念工作物」「建造物群」「遺跡」は、下記の価値基準の1つ以上を満足し、かつ真正性に関する審査に適合すると委員会が認めるとき、条約が目的とする顕著な普遍的価値を有するものとみなされる。
したがって各遺産は、
(a)
I) 人類の創造的才能の傑作を現わすものであるか
II) ある期間を通じ、またはある世界の文化上の地域で、建築、記念碑的芸術、都市計画あるいは景観デザインの発展において、人類の価値の重要な交流の過程を示すものであるか
III) いまも生きているか、あるいはすでに消滅した文化的伝統や文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠となるものであるか
IV) 人類の歴史上の有意義なステージを例証する、ある形態の建造物、建築物の秩序ある集合、または景観の顕著な例であるものであるか
V)ある文化を代表するような伝統的集落または土地利用の顕著な例であり、特に元に戻ることができないような変化の衝撃によって、すでに価値を損ねやすい状況に至っているものであるか
VI)優れて普遍的意義を有する事件、生きている伝統、思想、信仰、芸術的・文学的作品と直接にまたは明白に関連するもの
(委員会はこの基準が一覧表への記載を容認する場合は、極めて例外的な場合、または他の文化遺産または自然遺産の基準と関連している場合に限られるべきであるとみなしている)

でなければならず、かつ、

(b)
I)意匠、材料、技術または立地(環境)の、文化的景観の場合にはその独特な特徴と構成要素の、真正性に関する審査に適合すること(再建は、そのオリジナルに関する完全かつ詳細な根拠に基づき、いささかの推定も交えず行われた場合にのみ認められるものであることを、委員会は強調する)
II)申請される文化遺産、文化的景観の保護を確実なものとする適切な法的あるいは伝統的な保護のシステムと管理のメカニズムが存在すること。国、県、地元レベルの法的保護制度、またはよくできた伝統的な保護のシステム、および適切な管理のメカニズムが存在することが必須要件であり、これらが申請書に明確に記載されていなくてはならない。これらの法律あるいは保護のメカニズムの実効性に関する保証もまた、求められている。さらに、文化遺産の、特にその中でも多くの観光客にさらされている遺産の完全性(integrity)を確保するため、加盟国は、遺産の管理、そして保存と公開に関する適切な施策を講じていることを証明できなくてはならない。
(作業指針1995年2月改訂版より)


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