稲垣稔次郎 1902-1963
信州紬地型絵染着物・風(しんしゅうつむきじかたえぞめきものかぜ)
絹/型染
160×129cm 1953年
INAGAKI Toshijiro
Kimono, "Wind," stencil dyeing on tsumugi silk
silk / stencil dyeing
稲垣稔次郎ははじめ、精細で絵画的な効果を可能とする筒糊(筒描き糊染)で声価を得た。だが、従属した要素ではない、自律性をもった文様を志向する眼差しは、稲垣の関心を型へと向けた。本来的に型は、目的に辿りつくまでに繰り返された試行を経て、不要な事柄を削ぎ落として剥きだしにされた必然のかたちを指す。稲垣は、ただひとつの典型のうちにそのものの本質を抽出することを文様の本旨とし、そこに描写とは異なる美をあきらかにした。写生から型を起こし、文様へと転位するプロセス--それは自然の移ろいがただ一枚の紙を介し、線と面という言語による作家の美意識に集約されていく行為にほかならない。芒や蓼の形姿は斜線と曲線、面に置換され、それらの繰り返すリズムが、"風"という本作品のテーマを呼び起こす。わずか数箇所に配された霞の色面は構成全体を引き締め、秋草による情趣の裏側に潜まされた、意匠への強い意志を感じさせる。
1902年 京都市生まれ
1922年 京都市立美術工芸学校図案科卒業後、東京三越本店、続いて松坂屋京都支店図案部に勤務(〜1931年)
1948年 初個展にて型染による作品をはじめて発表
1958年 京都市立美術大学教授に就任
1962年 重要無形文化財「型絵染」保持者に認定される