イタリア各地をめぐった作者が最も好んだのは水の都ヴェネチアであった。朝の水辺の風景は、どこか、故郷の霞にかすんだ木曽川を思わせるものがあったのであろうか。まだ明け切らない早朝の静けさの中でゴンドラはひっそりと水面に漂い、朝霧の向こうには水上の古都ヴェネチアがうっすらと見える。ヴェネチアの風景を包み込むように描かれた手前の何艘もの黒いゴンドラは画面を引き締め、見る者がまるでゴンドラから向こう岸を眺めているような効果を生み出している。
細い運河
三岸節子
ヴェネチアの橋
霧