舞楽装束類(天野社伝来) ぶがくしょうぞくるい(あまのしゃでんらい)

工芸品 / 室町

  • 東京都
  • 室町
  • 〔亀甲花菱文半臂〕丈89.7㎝ 肩幅62.6㎝
    〔花輪違文半臂〕 丈77.7㎝ 肩幅78.4㎝
    〔蝶鳥瓜文向鳥丸散表袴〕 丈94.5㎝ 腰幅45.0㎝
    〔花輪違文絬袴〕 丈94.0㎝ 腰幅46.0㎝
    〔花兎牡丹文絬袴〕丈102.4㎝ 腰幅45.0㎝
    〔千鳥文切平緒残欠〕長(総共)67.5㎝ 幅6.3㎝
  • 6点
  • 東京都台東区上野公園13-9
  • 重文指定年月日:19880606
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 国(文化庁)
  • 国宝・重要文化財(美術品)

高野山の鎮守天野社(丹生都比売神社【にうつひめじんじや】)の一切経会【いっさいきょうえ】に際して行われた舞楽の装束である。これらの舞楽装束類は、現在高野山の金剛峯寺に伝えられる舞楽装束類(一部の装束に享徳三年=一四五四年の調進銘がある)と一連のものと考えられる。天保七年(一八三六)に狩野養信【おさのぶ】が筆写した『高野山学侶寳蔵古器及楽装束図』全六巻(東京国立博物館保管)には、金剛峯寺所蔵の舞楽装束類とともに、本件の舞楽装束類六点が写されており、また花輪違文半臂【はなわちがいもんはんび】に「天野一切経会二十具内」の墨書があることから、これらはかつて高野山の天野社に伝来した装束類であることがわかる。
 亀甲花菱文半臂【きつこうはなびしもんはんび】は紺綾地に亀甲を黄、花菱を白のやや太めの平糸で刺繍し、襟と袖ぐりに黄地襷花文錦【きじたすきかもんにしき】を飾っている。花輪違文半臂【はなわちがいもんはんび】は紺綾地に花輪違文を絞り染であらわしたもので、巧緻な木目絞りが美しく、室町時代の数少ない絞り染の実態を伝えている。表袴【うえのはかま】は蝶鳥瓜文を織り出した織色綾【おりいろあや】(経糸と緯糸の色を変え、地と文様を異色に織りあらわした綾)地に向鳥丸文を刺繍し、裾継【すそつぎ】には黄地襷花文錦(亀甲花菱文半臂の襟・袖ぐりと共裂)を用いる。その刺繍は亀甲花菱と同様な太めの糸で繍い、地の織色綾の文様も堂々としてのびやかである。花輪違文〓括袴【はなわちがいもんくくりばかま】は四幅【よの】の括袴で、表地は経糸に縹、緯糸に縹と黄を用い、縹地に黄色の花輪違文を織り出した錦である。この錦は経三枚綾組織【たてさんまいあやそしき】で、裏面では地と文様をあらわす色が反転し、表と裏のあいだに袋状の空間ができる特色を示すわが国の中世独自に見られる風通様倭錦【ふうつうようやまとにしき】である。花兎牡丹文括袴【はなうさぎぼたんもんくくりばかま】も四幅の括袴で、表地には作土【つくりつち】ふうの牡丹文と花兎文を織り出した中国(明代)の銀欄【ぎんらん】を用いている。また、切平緒【きりひらお】は紺麻地に千鳥文を刺繍した垂れの部分のみが残っており、その刺繍は亀甲花菱や向鳥丸文と同工の技法を示している。以上六点の舞楽装束は、室町時代の特色を示す数少ない舞楽装束の遺品であり、刺繍、絞り染、綾、錦など各種染織技法を伝えて貴重である。

舞楽装束類(天野社伝来)

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