形削盤(shaper)は、動力で駆動する刃物によって、金属部品を切削し、平面形状を加工する工作機械である。この形削盤は、薩摩藩の集成館機械工場で稼働した機械の一種である。
本機には、「NSBM FYENOORD 1863」の銘板があり、オランダ・ロッテルダム近郊の「オランダ蒸気船会社(Netherlandsche Stoomboot Maatschappij)」の製造になることが明らかである。動力源からの回転運動をクランクとラムによって水平運動に変え、刃物受けに取り付けた刃物(バイト)を動かして、テーブルに固定した金属部品を切削する。大まかな部品の位置の調節はテーブルを受けるサドルを上下させ、切削位置の微調整はハンドルで刃物を上下させて行う。機構や形状に一九世紀ヨーロッパの特徴が見られる。
藩主島津斉彬の創設になる集成館は、文久3年(1863)に英国艦隊の鹿児島砲撃によって壊滅的な打撃を受けたため、薩摩藩は戦後すぐに工場の再建に着手し、幕府の長崎造船所を通じて、機械類の導入と技術者の雇い入れを進め、明治維新までに鋳砲工場、蒸気鉄工機械所、紡績工場などが竣工した。廃藩後、一時官有となった後、再び島津家の所有に帰したが、機械類の多くは譲渡や更新によって散逸した。
本機が、集成館に設置された時期については明証を欠くが、文久2年から幕府が長崎郊外の立神<たつがみ>に工場建設を計画し、工作機械類を発注しているので、その設備として輸入された機械類のうちの1台とも考えられる。なお、国立科学博物館が保管する竪削盤にも、同年、同製造者の銘板がある。これも集成館旧蔵の機械の1台であったことが知られており、同じ伝来であろう。
本機は、幕末期に導入された近代的な工作機械の数少ない残存例の一つとして、わが国工業発達史上の貴重な歴史資料である。