工芸品 / 平安
-
平安 / 1061
- 広葉樹(欅か)の一材を轆轤成形し、表面に彩色を施している。
表面の彩絵は黒漆下地に透漆を塗った後、群青、緑青、丹、朱、墨、白などで文様を描き表す。革口側面は白下地に墨を塗り重ねた上に白で連珠文を表す。乳袋外区には対向する半切の四弁花文を、内区には対向する半切の四弁花文と完形の四弁花文を交互に配する。四弁花文は花弁内側を朱系の繧繝、花弁外側を群青系もしくは緑青系の繧繝とし、要所に墨をさし、輪郭を白でくくる。棹には中央の帯を挟んで左右に長方形区画をそれぞれ八区設け、各区画の帯寄りに三弁花文を表す。三弁花文は朱系の繧繝とし、要所に墨をさし、輪郭を白でくくる。各長方形区画内は緑青系および群青系の繧繝とし、繧繝の中央には黒地に白で連珠文を表し、区画の界線を白で引く。なお乳袋の四弁花文および棹の長方形区画の繧繝は、緑青系と群青系を交互に配している。乳袋の鬘、棹の座および帯には金箔を押す。
左右の乳袋外区に、四花形鐶座、円筒形鐶台、円鐶からなる金銅製鐶金具をぞれぞれ一箇ずつ打つが、鐶座はいずれも後補である。
- 総長44.5 外口径25.4(最大) 内口径22.0(最大) 革口厚1.5〜1.8
乳袋長(革口端部〜座の張り出し)15.7 棹長(座の張り出し間)12.7(㎝)
- 1口
- 重文指定年月日:20040608
国宝指定年月日:
登録年月日:
- 手向山八幡宮
- 国宝・重要文化財(美術品)
舞楽や法会の際に用いられる鼓の胴部で、二箇の鐶【かん】金具に紐を通して首から掛け奏したものである。
乳袋が長くかつ大きく張り、これに比して棹が短く太い点、全長に対する口径の比率が比較的高い点、帯がさほど肥厚突出していない点、乳袋を薄く造る点など、総体に鼓胴としての古態を示している。
また乳袋内の墨書銘に、本件が康平四年三月十四日、権大僧都覚源によって東大寺に施入されたことが記されており、本件の製作もほぼ同時期と考えられる。覚源【かくげん】(一〇〇〇~六五)は花山天皇第三皇子で、東寺長者や醍醐寺座主を歴任し、天喜三年から康平二年(一〇五五~五九)の間には東大寺別当を務めた。
現状の彩絵については、その筆致にやや繊細さを欠くこともあり、にわかに製作当初のものと断じ難いが、朱系や群青・緑青系の繧繝彩色は温雅な趣を伝えている。かつ永暦二年(一一六一)の修理墨書銘があることから、同年を大きく隔たらぬ時期の賦彩とも推察される。なお連珠文や、花弁文の輪郭のくくりに用いられる白色は、紫外線に対する発光が認められ、密陀絵【みつだえ】に類する技法を用いている可能性がある。
本件は年記を有する鼓胴としては現存最古となる。鼓胴の絶対的基準作であり、かつ施入者や伝来が判明する遺例として、その存在価値は高い。