壺からあふれんばかりに咲き誇る花々が描かれている。壺に描かれた女性像は、画面全体を引き締めるとともにロマンチックな雰囲気を作り出している。まるで白くやわらかな花の束が、壺の女性を優しく包んでいるようである。花は作者にとって生涯にわたって描き続けた特別なモチーフであった。当初、静物画の中の一部であった花はやがて画面いっぱいに広がり、茎や葉を省いた独特の姿になっていった。ガラスの花瓶や古代風の素焼きの壺などお気に入りの花器に、自らの手で丹精こめて育てた花を飾ることは、作者にとって日常の大きな楽しみでもあった。花の絵を描くときには、自ら植えた花の苗が育ち、美しい花を咲かせるその生命力を思い描いていたことであろう。「壺あって花あり。花あって壺なお生彩。楽しみ多き人生なり。」(「花より花らしく」『花より花らしく』)花は作者にとって人生の喜びそのものであり、美の象徴でもあった。