キッコウに憑かれて(A)

絵画 油彩画

  • 杉全直  (1914-1994)
  • スギマタ、タダシ
  • 昭和35年 / 1960
  • 油彩・キャンバス・額・1面
  • 162.3×130.5
  • 右下に署名、年記
  • 個展 東京、日本橋白木屋 1960

35
キッコウに憑かれて(A)
Possessed by Tortoise Shell Pattern(A)
1960年
油彩・麻布
162.3×130.5cm
右下に署名、年記:1960 直 SUGIMATA
1960年 個展(現代美術の焦点シリーズ第3回、日本橋、白木屋)
杉全は、美術学校在学中から中学の先輩にあたる飯田操朗の影響を受けてシュルレアリスムの理念に関心を寄せ、初期から堅実な写実による幻想的な世界を描いていた。しかし戦時中の抑圧と敗戦は、それまでの表現に対してある疑問を投げかけたようである。杉全によれば、敗戦時の破壊しつくされ荒廃した現実の情景を目のあたりにした時、人間の合理的な意識の内側にひそむ非日常的な世界を表現するシュルレアリスムの手法はまったく空しいものに思えたという。そのため戦後は、キュビスム的な手法で人間の形態を解体する作品を経て、やがて対象の再現を離れ絵具の物質性と表現行為そのものを残すような抽象画へと変貌していった。これは1950年代末から1960年代にかけての欧米でおこった抽象表現主義の流入とけっして無関係とはいえないだろう。そして色のかたまりのような不定形なフォルムが増殖し分裂する流動的な空間表現から、1960年ころになると六角形(亀甲形)という一つのフォルムをよりどころとする連作が始められ、この作品はそのシリーズの一点である。「自分にとって人間の生命体をみるし、六角形が生きてみえる。形象の中で唯一の生き物に思われるのである」(「キッコウの声」)と述べるように、杉全はエネルギーをもった「生命体」としての六角形の中に、外へ拡散する力と内へ凝結する力の拮抗し緊張した関係を求め、それを表現したといえるだろう。

キッコウに憑かれて(A)

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