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東京都・港区

国指定文化財(国宝・重要文化財(美術品)){百草蒔絵薬簞笥/内容品}港区南青山6-5-1

{百草蒔絵薬簞笥/内容品}

慳貪蓋【けんどんぶた】を付けた薬簞笥とその内容品である。内部に大小十個の引出を収める。木胎漆塗りで、総体を研出蒔絵【とぎだしまきえ】で加飾する。簞笥の底面を除く外側面および内部に収めた引出の前面は、外側面を七十三、内部の前面を十八、合わせて九十一の部分に不規則に区画し、各々に全て異なる文様を配した寄裂【よせぎれ】風の意匠としている。
 蓋の裏側には、鬱金【うこん】や薄荷【はっか】、葛根【かっこん】などの草花に、蛍、蟷螂【かまきり】など二十三の昆虫を加えた百種の草虫を研出蒔絵で表す。各草虫の脇には、その名称を一・五ミリ角ほどの文字で記す。
 金具はすべて銀製鍛造【ぎんせいたんぞう】、彫金、鍍金【ときん】である。内容品の銀製合子【ぎんせいごうす】も、同じ製作者の手になるもので、地を鋤彫【すきぼ】りで彫り下げ、細かい刻点を主体とした荒し鏨【たがね】を打ち、文様は薄肉の浮彫り風に表し、細かい毛彫りと魚々子【ななこ】鏨【たがね】等で細部を表現する。
 内容品は、銀製合子のほか、硝子製薬瓶【がらすせいくすりびん】、渋紙製薬袋【しぶがみせいくすりぶくろ】、鍼灸道具【しんきゅうどうぐ】など多くが各引出にあわせて製作されている。内容品の墨書や付属する目録等から、当時の医療品の事情が知られ、資料価値も高い。
 意匠の特徴として、まずは寄裂風の文様構成の奇抜さがあげられる。各区画には、漆工品だけでなく染織品や料紙装飾、金唐革【きんからかわ】やモールなどからも取材したとみられる紗綾形文【さやがたもん】、観世水【かんぜみず】など、多様な文様が表されている。版本の図譜や裂手鑑【きれてかがみ】、流行の文様の影響といった時代背景がうかがわれ興味深い。なお、銀製錠【じょう】金具や隅【すみ】金具、銀製合子など金工の意匠も奇抜であるが、類例をみない新規性のある意匠も散見される点は、漆工とは異なる趣向で、製作者の違いによるものと思われる。
 一方、本作の名称の由来にもなっている蓋裏の薬効のある百種の草虫の、重なり合いながら蓋裏を覆い尽くすように表され、奥行きのある空気感を感じさせる立体的な文様構成は、同時代の漆工品にもほとんど見られない独特な表現である。細密な草虫の描写や、その名を微細な金蒔絵で添えている点は、本草家など専門家の関与が指摘されている。
技法的には、加飾が全て研出蒔絵で行われている点がある。金、銀、青金など材質や、粉の大きさも異なる多様な材料を用い、それらを漆で塗り込め、塗膜【とまく】の表面に文様が現れるように全体を研ぎ出すことは、きわめて高度な技術である。
 作者の初代飯塚桃葉(?〜一七九〇)は、江戸中期の蒔絵師で、宝暦一四年(一七六四)に徳島藩主蜂須賀家に抱えられた。本作の身の左側面下方には「観松齋/桃葉造(花押)」の金蒔絵銘があるほか、身の底裏左下方に「明和八辛卯年十一月日」の彫銘がある。
 本作は、多様な分野を源泉とする意匠や、収められた内容品の豊かさから、徳島藩による発注や製作の背景についても示唆に富んでいる。また、それらを一つの調度にまとめあげた意匠の構成力および研出蒔絵の巧緻さは、飯塚桃葉の技量を十二分に伝える基準作にして代表作といえる。

国指定文化財(登録有形文化財(建造物))常行院納骨堂東京都港区芝公園二丁目11-1

常行院納骨堂

増上寺の東に位置する寺院の納骨堂。鉄筋コンクリート造、入母屋造桟瓦葺妻入、主体部は太い円柱に長押を廻して花頭窓を設け、唐破風の向拝は角柱で虹梁や蟇股で飾る。内部は一室で地下に納骨棚を備える。重厚な意匠の近代仏堂で、山内寺院の景観を整える。

国指定文化財(登録記念物)菊池氏茶室(■(石偏に間)居)庭園東京都港区

菊池氏茶室(■(石偏に間)居)庭園

建築家で茶室・庭園の研究者でもあった堀口捨己(ほりぐちすてみ)(1895~1984)が,建物と一緒に設計した庭園で,昭和40年(1965)に完成した。■(石偏に間)(かん)は谷川を意味し,■(石偏に間)居(かんきょ)とは谷川の流れに沿った静かな家のことを言う。庭園は茶室周りの露地と茶室北西の広場の2つの部分から成り,露地は内露地と外露地に分かれている。
中心となる内露地は,秋草の庭として造られ,小間前と広間前の空間から成る。小間前の空間は,外露地からの飛石が蹲踞(つくばい)を経て躙口(にじりぐち)まで続く。広間前の空間は,広間から見て外側左手に竹と栗を用いた縁が奥に向かって延び,縁の向こうには,なだらかに傾斜する築山が築かれている。築山にはススキ等の秋草が植栽され,その手前から右手奥へは流れが造られている。築山の裾部に低いマツ類を流れに沿うように配し,また築山の背後は竹垣で区切り,竹垣越しにカエデ類を並べる。茶室の北西に位置する広場は,元々の地形をそのまま活かした設計となっており,サクラ類のほか,様々な樹木が植えられている。
菊池氏茶室(■(石偏に間)居)庭園は,建物と庭園が一体となって趣のある空間を形成しており,造園文化の発展に寄与した意義深い事例である。

国指定文化財(登録有形文化財(建造物))心光院本堂東京都港区東麻布一丁目1-1

心光院本堂

第二次大戦の空襲で本堂を焼失し、昭和二五年に区画整理で現在地に移転後再建されたもの。木造平屋建、入母屋造桟瓦葺で、柱はヒノキで内陣及び須弥壇後方のみ円柱とする。全体を伝統的な手法でまとめるが、西面の格子ガラス窓などに近代的な要素も併せ持つ。