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法観寺塔婆
1932年
油彩・キャンバス
116.0×90.0cm
右下に署名
1932 須田国太郎油絵個展
東京国立近代美術館蔵
The FiveーStoried Pagoda of the Hokanji Temple, Kyoto
1932
oil on canvas
116.0×90.0cm
signed lower right
The National Museum of Modern Art, Tokyo
京都東山の八坂の塔として知られる法観寺の五重の塔を描いた初期の社寺図の代表作。「私はある夏の午後、驟雨が上って背後の黒ずんだ山の前に白く浮き出たこの塔の前を電車で通り過ぎたのであった。この時の印象はこげついてはなれなかったので、改めて数日後この電車通りの向いの飲食店の横のごみための上に画架を置いて描いたのがこれである。夏のひる下りの陽のもとでは全く別物に見えたが、失張りその時の印象の出どころであることは動かない。丹塗りの建築細部、光る無い屋根を全然逆な効果に代えてゆくことができた」(1)と制作に至る経過について画家自身が述べている。手前の狭く立ち並ぶ電柱や民家とその奥にずっしりと荘厳にたたずむ古寺の塔とは、前景と後景、日常性と非日常性、動きと不動性、現在性と過去、永遠性というように、対照されつつ融合されて描かれ、名塔の構成美を捉えながらも、単なる一光景の断片に終わらせず、その背後にある実在の本質をつかみ出そうとしている。
(1)『須田国太郎』〈現代画家選・17〉、1955、美術出版社