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水郷
Waterside Village
1911年
油彩・麻布 161.0×107.0㎝
小杉末醒は、文展の第4、5、6回展に連続入賞したが、作品はいずれも、樵夫、漁夫、農夫など労働を題材にしたものだった。これらの作品でも、ヨーロッパ旅行後顕著になる装飾性は、すでに構成上に見てとれ、なかでもこの作品には、世紀末芸術の影響を思わせるグラフィックな構成が見られるが、帰国後の作品とは題材の選択において異なっており、そこに明治後期の自然主義の形跡を指摘できるだろう。
この作品がまるごとの写生でないことは、事物の並列的な布置から一見して感じとれよう。背後の水郷風景は舟上の人物とは無関係に展開し、洲上の水鳥や新味のあるポプラの木も、人物の表現の上でなんら具体的に開係づけられてはいない。そしてなによりも人物そのものが、自然主義的描写にもかかわらず、画家の具体的な感覚から切り離されている。むしろここでは、事実への感覚は断たれ、挿画家の手でグラフィックに描写された事物は、明瞭な構図の上に抽象的に配置されている。『方寸』同入山本鼎(かなえ)が評したように、臨物に執着せず画面構成の上で多くの工夫をなす洋画家未醒は、事物を抽象化していく構成上のグラフィックな装飾性に本領を発揮した。前近代に題材をとりながら、こうした抽象的な装飾感覚が、当時は、大芸術たるべき西洋画のになうべき近代性として評価されたようである。