33
ベン・ニコルソン(1894−1982)
NICHOLSON,Ben
静物―線と茶
Still Life−Green and Brown
1965年
油彩・板紙
55.0×68.Ocm
木とか人物とか具体的に名づけられるようなものを描いた絵を具象画といい,それ以外の絵は抽象画と呼ばれるのがふつうだが,これはあくまでも便宜的な区別でしかない。ただ色とかたちだけでできた,一見したところ何も指示していないような絵でも自然なり事物との深いつながりを秘め,そのために具象画いじょうに具体的な抽象画もある。これもその一点。作者のニコルソンはイギリスを代表する抽象画家。パリでブラック,ピカソのキュビスムに感化される一方で,きわめて幾何学的なモンドリアンの造形思想にも強くひかれた。その結果,あくまでも自然から出発しながらも,ここに見るように澄明で抑制された色彩と,線描を主体とした禁欲的で理知的な構成による,冷ややかで明るい独自の抽象画に到達した。非情な直線と,生命体の一部をおもわせるような曲線を組み合わせた構成が思いのほか自然を意識していることは,題名に含まれた緑つまり樹木,茶つまり大地ということばからも明らかである。