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石だたみ
Stone Pavement
1961年
油彩・麻布
80.0×100.0cm
右下に署名:Cyokai
1962年 鳥海青児自選展(東京、松屋)
4年間にわたる滞欧生活から帰国した鳥海をとまどわせたのは、日本の自然の繊細さであった。かつてスペインやアルジェリアを訪れ、その強烈な陽光のもとでの乾燥した風土に魅せられた彼には、日本の湿潤な風土はあまりに微妙な変化に富み、油彩画でこれを表現することは至難のことだとおもわれた。というのも、彼が体得した油彩画の表現とは、滞欧中の《ノートルダム寺院》のシリーズのように、絵具が幾重にも塗り重ねられ、重厚なマチェールをつくりあげ、やがてその絵具層そのものが物質的な存在感を主張するものだったからである。だが、帰国後に描かれた《信州の畠》(1936年)をみると、地表の微妙な調子をすべてはぎとり、荒々しい大地の相貌を描きとろうとすることで、この難題をのりこえていったことがわかる。いわば、自然の本質をつかみとろうとする姿勢は、戦後に描かれたこの作品でも変わることはない。この《石だたみ》は、単純化されたフォルムと褐色の狭い色相のなかで変化する色面によって構成され、しかも塗り重ねられた絵具がそのまま石だたみの硬質な物質性を感じさせる。