七宝四季花鳥図花瓶〈並河靖之作/〉

しっぽうしきかちょうずかびん〈なみかわやすゆきさく/〉

概要

七宝四季花鳥図花瓶〈並河靖之作/〉

しっぽうしきかちょうずかびん〈なみかわやすゆきさく/〉

その他 / 明治 / 関東

並河靖之

東京都

明治/1899

肩から胴部にかけて張りを持ち、裾に向かって引き締まる形状の花瓶である。頸は短くくびれて立ち上がり、口縁部は外反する。金属製鍛造の胎で、器面に有線七宝の技法で図様を表す。口縁部と底部は別造の覆輪と底板をそれぞれ嵌める。
図様はすべて有線七宝によるもので、花や葉、鳥の羽根などの輪郭は、薄い金属の細帯を図様の形に屈曲させて器面に植線することで表している。
釉の色調は明るく、彩度が高い。色数は豊富である。各種の釉薬は不透明なものが多いが、芙蓉や菖蒲の葉など一部に透明釉も用いる。地の黒色釉は、濁りのない真の黒を呈し、色むらや不純物の混入、釉の欠損などは見られず、滑らかで光沢のある表面となっている。
蛍光X線分析調査の結果、本体と別造の覆輪と底板は赤銅(銅と金の合金)、輪郭線となる金属の植線は全て金を用いていることが確認された。基礎的な釉薬はカリウム鉛ガラスである。地色の黒色釉は、銅、マンガン、コバルトにアンチモンを加味して発色させている。青系は銅とコバルト、赤系は鉄とマンガン、緑系は銅とクロム、アンチモンを主として用いている。他の並河七宝で用いられる釉薬の成分と概ね合致している。

高36.0㎝ 口径9.8㎝ 胴径25.0㎝ 底径10.1㎝

1口

千代田区千代田1-8

重文指定年月日:20250926
国宝指定年月日:
登録年月日:

国(文化庁)

国宝・重要文化財(美術品)

一九〇〇年パリ万国博覧会出品のため宮内省より製作を依頼された作品で、近代七宝を牽引した並河靖之(一八四五~一九二七)の代表作である。
 
 
 釉の色調は明るく、彩度が高く、色数は豊富である。また、輪郭線の内側で色彩のグラデーションを多用する事により、モチーフとなる鳥や植物の特徴をより忠実に表現し、立体感や空間の奥行を感じさせることにも成功している。地の黒色釉は、濁りのない真の黒を呈し、色むらや不純物、釉の欠損などは見られず、光沢のある表面となっている。この黒色釉が鮮やかな花鳥の図様を引き立てつつ、空間の広がりを感じさせる効果も持っている。
 並河工房の工場長として知られた中原哲泉(一八六四~一九四二)は、優れた下図を多く残したことで知られ、本作品の下図も手がけており、その一部が現存している。花や葉の輪郭は細筆による均一な線で描かれており、肥痩線はそれと明確に区別して描かれている。製作に入る前の綿密な計画と準備を伺い知ることができる。
 この花瓶は、有線七宝による細緻な図様表現、器形と調和した構図、明るく豊かな色彩の釉調など、並河七宝の特色が余すところなく発揮されている。並河の作品の中でも最大級の大きさを誇り、代表作と呼ぶにふさわしい堂々たる姿である。明治時代の七宝作品のなかでも際立った作行を示しており、近代工芸史上で欠くことのできない重要な作品である。

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